今日は夫の休日で、私は見たい映画があったので話したら、快く同意してくれました。
この映画のことは、食料品の宅配会社の注文書の中に入っていて、知りました。
料理家で作家でもある辰巳芳子さん(88歳)のドキュメンタリー映画「天のしずく 」 辰巳芳子”いのちのスープ”です。
11月3日から劇場公開されています。
23区内では3カ所だけでの上映です。
電話で問い合わせて、今日はヒューマントラストシネマ有楽町が午前一回、午後一回上映することがわかり出かけました。
60数席の狭い劇場だったので、2時間前に席をとりましたが、あと数席しか残っていませんでした。
辰巳芳子さんは、お料理の名手であったお母様からお料理を伝授され、ご自分もさらに研鑽をつまれ、心を込めた丁寧なお料理をされることで定評があります。
さらに食の安全と日本の食料自給率向上のために、実際に幅広く活動されています。
辰巳さんの日常の暮らしから、多方面での活動の様子までを、日本の四季の自然の美しい情景、音、音楽を背景にして、情感豊かに描かれていました。
私は2・3回胸がいっぱいになり、涙が流れました。
夫も「涙は出なかったけど、感動したよ」と、言っていました。
辰巳さんの本は何冊も読んでいて、お料理もいろいろ参考にしてきました。
辰巳さんは若いころ、ご病気をされたそうで、そのせいか一生独身で、お料理一筋に生きてこられた方だと思っていました。
ところが映画の中で、戦争時代の経験についてのインタビューで、私は初めて知ったことがありました。
昭和19年、辰巳さんには婚約者がありましたが、その方は早稲田を繰り上げ卒業して働いておられ、間もなく召集されることになりました。
そのため、辰巳さんのお父様が婚約者の方に、結婚を延期するよう話に行かれたそうです。
辰巳さんもお父様の考えに従うつもりでいました。
ところがお母様から、婚約者の方が目に涙をためていたということを聞かれ、辰巳さんは「目に涙をためている人を、このまま行かせていいのだろうか?」と悩まれ、結局婚約者の方と結婚されます。
結婚後三週間で夫は戦地に行き、やがてフィリピンのセブ島で戦死します。
それから50年、心の奥深くで、「私の選択は正しかったのだろうか?」その問いがずっと残りました。
そして50年たった時、フィリピンのセブ島に行ってみようという思いが出てきて、夫が戦死した土地に行かれました。
セブ島は美しいところで、船を出してもらって南半球の夕日が海一面に広がるところに身を置いた時、「ああ、ずーっと見守っていてくれたんだ」という思いがしたそうです。
この話を辰巳さんは、淡々とさりげなく、それでいて深いところからの思いが伝わってくるように話しておられました。
人の思いの深さ、計り知れないつながりの不思議、そんなことを感じて、涙があふれました。
「愛することは生きること、生きることは愛すること」
その言葉が胸にひたひたと染み入る映画でした。
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