ルリユールおじさん
1月5日は私の誕生日ですが、毎年誕生日に絵本を送ってくださる方がいます。
今まで送ってくださった本は色々な内容でしたが、どれも心に残るものでした。
今回は『ルリユールおじさん』という「いせ ひでこ」さんの本でパリが舞台の話です。
この本は講談社出版文化賞絵本賞を受賞しています。
私はいせさんのことは、雑誌の対談などを読んで知っていました。13歳まで札幌で育ち、木に登って下界を見つめているような子だったそうです。
この絵本は水彩画で描かれていて、パリの町の雰囲気が伝わってくる美しいものです。
パリのアパ―トのベランダでは、一人の少女が大切にしてた植物図鑑がバラバラにほどけてしまいます。バラバラになるほどに読み込んでいたのです。
町へ出た少女は、「こわれた本はどこへもっていけばいいの?」と色々な人に尋ねます。
「そんなにだいじな本なら、ルリユールのところにいってごらん」と教えられます。
ルリユールおじさんを探して方々を歩きます。そしてとうとうルリユールおじさんのアトリエを見つけます。
部屋の中はものがいっぱいでごちゃごちゃですが、「こんなになるまで、よく読んだねえ。なんとかしてあげよう。」と言ってくれます。
本をバラバラにして、糸でかがっていくところからはじめます。製本の工程を職人の仕事として丁寧にしていきます。
ルリユールおじさんは「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱい詰まっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えてい くのがルリユールの仕事なんだ。60以上ある工程をひとつひとつ身につけ、最後は背の革に金箔でタイトルをうつ。ここまできたら一人前のルリユールだ。」と言います。
おじさんのお父さんもルリユールでした。「名をのこさなくてもいい。ぼうず、いい手をもて」とお父さんは言ったそうです。
おじさんがつくってくれた本は、二度とこわれることはありませんでした。そして少女は、植物学の研究者になりました。
手仕事の価値を教えてくれ、懸命に生きるおじさんと少女の心温まる交流が描かれていました。
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