紅葉の海の中で
今年の夏は、殊の外暑い夏でした。標高1200メートルのわが家でも、30度近くになる日が何度もあり、普段暑さに慣れていない体にはこたえました。10月になっても20度を超える日がありましたが、日中はまだしも、10月早朝の気温は5度前後です。この大きい寒暖の差は尋常ではありません。それが影響したのか、10月末から11月にかけて木々の紅葉は、息をのむほどの美しさになりました。
もともと八ヶ岳周辺は観光地でもありますので、モミジの木がいたる所に植えられています。さらにモミジの実生もそこかしこに見られるので、一歩家を出れば紅葉の海と形容したくなるほどの豪華で華やかな紅葉が目に飛び込んできます。
京都も紅葉の美しいところとして有名で、由緒ある神社、仏閣などが庭の紅葉と共にある姿は、人々のあこがれであり、多くの人が一目見ようと京都に押し寄せるようです。八ヶ岳は観光地ですが、歴史的建造物の宝庫というわけではありません。ところが、このどこにでもあるような大自然の景観に、木々の紅葉が加わると、そこは特別に華やかできらびやかな場所と感じられるのは不思議です。紅葉効果と私は呼んでいます。
こじんまりした簡素な山荘も、庭に1本モミジの木があり家を覆うように紅葉していると、何とも風情のある意匠を凝らした建物のように見えるのです。
毎年紅葉の季節には、同じようなことを感じるのですが、全山が赤や黄に染まり、人間を楽しませてくれるので、これから迎える厳しい冬も、何とか乗り越えようという気持ちになります。自然が与えてくれる無償の愛というとおかしいかもしれませんが、それほどの豊かさを秋は人間に与えてくれます。
紅葉と共に、私たちの命を支える作物の収穫時期でもあり、沢山の果物や木の実の多くが秋に実ります。
生きとし生けるものは、この壮大な自然の営みの中で生かされ、育まれ、次へと命をつないでいくのですね。
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